暗譜法、記憶の仕組み

記憶以前Piano Practice Assistantというアプリを使ったことがある。記憶に関するさまざまな研究結果に基づいて開発されたらしい。

記憶術について過去の研究から効果的なのがわかっていることがふたつある。Spaced Repetition (間を開けた反復)これは、ひとつのセクションを長時間いっぺんに練習するよりも、一定の時間、日にち、週を空けて繰り返し練習する方が記憶の想起に対して効果的という原理。

Interleaved Practice(差し挟み練習)、もしくはDistributed Practice(分散練習)これは実際には、間隔反復の原理を一回の練習時間の中で用いたもので、一度の練習の中で、同じセクションを短い時間、複数回行うこと。その際に、短いセクションをランダムな順番に混ぜて(つまり差し挟んで)やることだ。すべてのセクションを順番に長い時間練習するBlocked Practiceより効果があることが研究からわかっている。

暗譜というのは中期・長期記憶に音を刻み込んでいくことだから、そのためには覚えた音を中期・長期記憶から取り出すという作業を練習する必要がある。今覚えたばかりの音は作業記憶に保存されているため、すぐに繰り返して想起して弾けたとしても、それは作業記憶から取り出して弾いているだけの可能性が高い。その時は弾けても、次の日には忘れている度合が高く、非効率的になる。

差し挟み練習では、まずAセクションを短時間練習し、次にC,E,B、D とランダムに他のセクションの練習を間に差し挟んでいく。つまり作業記憶スペースには次々と新しい情報が流れ込んでくるので、最初にインプットしたAを保持しているのが難しくなる。(人間は一度に7つぐらいしか作業記憶スペースに保持できないらしい。音楽の演奏ではひとつのセクションを弾くのにさえ、7つどころではない多くの作業が複合的に含まれていることを考えれば、おそらくひとつかふたつの短いセクションを続けて練習しただけでも、最初に入れたセクションは作業記憶からクリアされるのではないか)。つまり最初にインプットしたAは、他のセクションをインプットしている間に作業記憶スペースからかなりクリアされてしまっている可能性が高く、ということは次に何分か後に再びAの練習に戻って来た時には、作業記憶からではなく、中期・長期記憶から引き出そうしなければ引き出せないことになる。

このように、差し挟み練習法を取ることで、記憶したことを中期・長期記憶から取り出す神経回路を強化する訓練になっているようだ。Blocked Practiceはその時は弾けるので弾けたような感覚が得られるのだが、それこそが落とし穴とも言える。

このアプリでは、あらかじめ打ち込んで置いたセクションやサブセクションをアプリがランダムな順番で指示してくる。

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